鍵盤をラブレターにするのはお洒落だなぁと

ピアノ・レッスン [DVD]
ピアノ・レッスン [DVD]
言わずと知れた名作ですが、今回初見でした。全編にわたって寓話的なムードに支配されていて、すべてが夢の中で起きているかのような情景、そんな中で、昨今のピアノドラマ(というべき類の、純情きらりとか、のだめとか)と比べて、やはり主役の方が完全にばっちりピアノを「弾けている」というのが大きくて、というか主人公がピアノ弾くんなら弾けて当たり前ですよね。ズームとか引きを使わないで、スタントを使って、女優の顔/上半身アップのカットと交互に繋いでばかりでは、色気も情感も雰囲気もハーヴェイカイテルの全裸も(ちょっと出過ぎだったような)へったくれもないですし。
オザケンが「長い夜に部屋でひとり ピアノを叩き水をグッと飲んで/あん時誰か電話をかけてくりゃ涙だって流してた?」と歌い、椎名林檎が、「今朝の様にお帰りが酷く遅い日もしばしば/明け方の孤独にはピアノで舞踏曲を」と歌うように、深夜と孤独にはなぜかピアノが良くお似合いのご様子ですが、実際、作品中にも、主人公が深夜「眠ったまま」ピアノを弾き始めるシーンがあったりして、けっこう印象的なシーンでした。彼女の内面の孤独の象徴として、ピアノのロケーションや人との関わりが実は緻密に計算されていたのだなと気がついたのは実はエンドロールという次第で、ところでこれって、舞台なんかでやっても面白そうな脚本ですよね。