虚構と現実のボーダーぎりぎり

わたくし、数年前に某Eゼミの映像コースに通っていた忌まわしくも忘れがたい時期があるのですが、そのゼミの卒業制作のロケハンで、グループメンバーの方(60近い初老の男性でした)と2人で一日かけて神奈川県の南方の辺りを廻った記憶があります。SFC藤沢キャンパスにこっそりもぐりこんだり、あとは鎌倉から葉山の方まで海岸をひたすら見て回ったりして、結局本番は由比が浜を使うことになったのですが、本番撮影のときより、ロケハンのときにその初老の男性(申し訳ないことにお名前を失念してしまいましたがたしかOGAWAさん)と道中様々な映画議論を交わしたこと、というよりもむしろ、彼の映画への熱い思いを訥々と打ち明けられたことの方がやたらと印象に残っています。
オープン・ユア・アイズ [DVD]
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その彼(仮にOGAWAさんとしましょう)の話の中で説法のように何度も登場してきたのがこの作品で、しみじみと「わたしはあの『オープン・ユア・アイズ』って映画が大好きでね、あんな映画を撮ってみたいと思ってるんですよ」と。OGAWAさん。齢、たぶん50くらい。もうだいぶ適当です。すいません。
そのとき私はまだ本編未見だったので、作品の説明を聞くのみで、そのあとも折に触れてずっと気にはなっていたのですが、そんな数年来の靄を払拭するがごとく、本日ようやく見る機会に恵まれました。久々に学校(四谷三丁目)の辺りを歩いたりしたのが功を奏したのでしょうか。

一言で言えば「一度きりの人生、やり直しはきかない」というテーマが物語の中心にあるのですが、主人公をとりまく状況をシーンによって微妙に変化させていくことによって「夢」と「現実」のずれ、はたまた「来世」と「現世」の境界線を見せているのが巧みだなと思いました。これをもっと歪曲化させてちょっと悪趣味な感じにすると「マルホランド・ドライブ [DVD]」になるんですね。
主役の人は日本人の若手俳優(ブラウン管の中心で愛を叫んでる人)を3倍マッチョにした印象を受けますが、それはともかく、ペネロペ・クルスという女優さんはとてもよい役者さんで、仲間由紀恵を3倍キュートにして6倍色っぽくして9倍芝居をうまくした感じ、というとさすがに語弊がありますが、リメイク版でも同役で出演するだけのことはあるなあと。そちらまだ未見なので近いうちに見てみます。