「力よ、お前のために死ねるヤツは何人いるか?」


http://www.sonypictures.jp/movies/rikidozan/site/index.html
テアトル新宿で見てきたんですが、これって2004年撮影の作品で、台湾などでは既に(海賊版だかなんだかわかりませんが)DVDもリリース済なんですね。何が吃驚したって、故橋本真也氏(2005年7月死去)が普通に出演していて、最初フレームインしてきたときはそれこそ幽霊が出てきたかと自分の目を疑ってしまいました。クランクアップから封切りまでタイムラグがありすぎるとこういうことまで起こってしまうのですね。考えられないことではないとはいえ、なんだかちょっと恐ろしいです。だって新作映画に出ているキャストが今はもうこの世にいないわけですから。
映画の方は奥さん役(「嫌われナントカの一生」に出られる中谷さん)の献身ぶり、それ以上に会長(藤竜也)の生き様が今でいうプロデューサー業まっしぐらで、これがまた力さんと対照的に描かれていて、個人的にはその点が非常に印象的でした。
全体の印象としては、映画としてみるとちょっと無骨あるいは粗雑すぎで、人物の再現映像としてはよく出来た部類なのでは(いくらかかってるのか分からないのですけど)。いくつかのエピソード(フィクション/ノンフィクション)をとにかく次から次にクロノロジカルに並べていき、そのことで主役の人物像を作り上げようとしているのですが、いかんせん力さんセリフ棒読み(でもあの分量の日本語を覚えつつレスリングもこなして、ウェイトもレスラールックレベルまで上げたのだから役者としては見上げたものです)、で音楽の使い方はいわゆる韓国的オーソドックススタイル(要はいちいちムダにもりあげる)、そのくせカット割りが妙に少なくて、そんなところでまで主人公の無骨さを出そうとしてんのか?とか勘ぐってみたり、シャワー室かよ!と突っ込み入れたくなるような飛沫上がり過ぎの雨、などなど突っ込みどころは満載だったのですが、それにしても、その無骨さ、いってみれば不器用な「点と点のつながり」が妙に味わいというか、作品としての個性を持っていたりしたのも事実です。
ちなみに客層が非常に偏っていてそれも大変面白かったです。うしろの席の客(中年男性。若い女性連れ)が上映前に自慢気に力さんのことをあれこれ説明していて軽くヒキました。見る側も見せる側も、ノスタルジアだけにとどまってしまうとちょっともったいない気がします。