新しい場所へ/誘ってゆく

ワルツを踊れ Tanz Walzer
ワルツを踊れ Tanz Walzer
言い訳になるのだけれど、「JUBILEE」の先行着うた配信(フルではないのでサビの部分だけ)、そのあと見た歪んだ貼り絵のようなPV、伸び切ったメンバーの髪、眼鏡を外して音楽番組に出演する岸田繁、そういう付加的な情報・断片的な要素でもって、「今度のアルバムもいつもと同じ程度だろう」と判断してしまっていた。
試聴してみたらその印象はがらっと変わった。「ランチ」を彷彿とさせる「レンヴェーグ・ワルツ」の、途中で転調する展開はいままでにない。「マーチ」をさわやかにした感じ、いや正直それ以上のリードトラック「ブレーメン」のアウトロの軽やかな疾走感、「恋人の時計」の「ずらずら/ずらずら」という擬音が非常に印象的。
「クラシックの要素を持ち込む」という意識と「ワルツ」というテーマがアルバム全体に通っていて、全体のつながりが非常にクリア。歌詞のオリジナリティも、ハムを「桃色」と表したり、あるいは先の「ずらずら」もしかり、制作する際の精神的な余裕が感じられる。