引きずり込まれていく、シンプルに、明快に

ブルーベルベット 特別編 オリジナル無修正版 [DVD]
ブルーベルベット 特別編 オリジナル無修正版 [DVD]
来たる「INLAND EMPIRE」に向けて、勝手にリンチ鑑賞協会を一人で結成して過去作品を復習の日々。ローラ・ダーンが初々しすぎる「ブルーベルベット」なんだけれど、デニスホッパーの側から見た(あるいは、耳の穴の向こう側からの)映画としても、もちろん楽しめる。デニスホッパーにとことん辱められるイザベラ・ロッセリーニの纏う「青」と、部屋の壁の沈み込むような深い「赤」の静かな、それでいて確かなコントラストが美しい。
特典映像のドキュメンタリーを見ると、ボビー・ビントンの「blue velvet」はオリジナルを使いたかったのだけれど予算的にむつかしかったのでわざわざ新録したという。しかも本人を使って、というのがすごいところで、数十年ものの漬け物とか、梅干しとか、そういうのを連想させる。「マルホランドドライブ」の"I've Told Every Little Star"(オーディションで歌っているシーン、監督が片側だけヘッドホンを外して、傍らのプロデューサーに"that's the girl")、これも同じ'50sのにほひがプンプンするのですが、いかんせんオリジナルを現代のテクノロジーでアレンジしてる分、なんとなく浅漬けというか、でも映画全体との不気味さというか、ミスマッチさという意味では成功している。いずれにしても、リンチのように昔の音楽をシュールレアリスティックに使う作家は、こと日本においてはあまり見かけない気がする。