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ウエスト・サイド物語 [DVD]
ウエスト・サイド物語 [DVD]
タモさんがミュージカル嫌いというのは有名な話ですが、その理由に「なぜ登場人物が劇中に突然歌いだすのか理解できない」ということをあげていました。至極真っ当な理論ですが、台詞に差し挟まれるその「異物感」こそがミュージカルのアイデンティティそのものであり、ミュージカル映画の場合はその「異物感」との距離の置き方によって作品のテイストも変わってくるということになります。
「ウエストサイド」は最近プレミアム版DVDが出たみたいで(これは非常に欲しいです)、夜中にケーブルテレビでやっていた粗悪な画質のを少し見たのですが、「tonight」に辿り着く前にトニーの「マリーアー」って歌う曲で既にちょっと感極まってしまいました。年をとると不便になります。以前は普通に見れたシャーク団の「アメリカ」でもちょっと感動したりとか。
それはともかくとして、これはもうまっとうな、純血正統派のミュージカル映画です。キャラクターの感情の起伏が高まっていって自然と歌に入り、終わったところで次のシーンへ。元々舞台で上演されているものなので歌と芝居部分の切れ目がはっきりしています。それに対して、
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]
こちらの作りは1曲1曲が物語の中にスムーズにとけ込んでいるので、見ていてあまり違和感がありません(なぜならロックバンドの映画だから)。
良いミュージカル映画の絶対条件として、劇中使われている曲がすべからく名曲(すなわち捨て曲なし)というものがありますが、「ヘドヴィグ」に関してはその点、もしかしたら先述の「ウエストサイド」を凌ぐかもしれないくらいの恐ろしいクオリティの高さを全曲保持していて、それらのトラック群がバランスよくストーリー内に配置されているのがかなり効果的です。
この作品は、歌のシーンの演出が非常に凝っていて感心させられます。テーマに対するアプローチの仕方も実はものすごく真摯で、その結果として答えが「ロック」というのが非常に潔いです。