新聞の上で抱き合う2人

風の歌を聴け [DVD]
風の歌を聴け [DVD]
自分にとってのハルキ原体験は「1973年」でも「羊を巡る」でも「ダンス×3」でもなく、この映画でした(中学3年、修学旅行の夜に深夜のテレビ映画にて。みんな女子の部屋に行くことに夢中だった中でテレビをつけたら「僕は双子の彼女に二度と会うことができなかった」とか流れていてこれは一体?と)。全体に漂う奇妙な緊張感、それと「僕たちは新聞の上で抱き合った」というフレーズだけが記憶に残って後は何も覚えていないという、捻れた健忘症みたいな状態でしたが、時間の経過を経て、システマティックになったのかケオティックになったのかよくわからない思考回路で見てみると、ATGにもなりえない微妙な出来損ないとしか言いようがない「危うさ」がそこにはあって、けれどもその危うさこそが村上作品の世界観であり、それをうまく映画というパッケージに昇華させたのが『トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD]』なのかなと思いました。言語スタイルの相違という最大の壁は、克服するのにエネルギーが要りますね。