『世界』


やっと見てきました。銀座テアトルの前売りで吉祥寺バウスに入るというかなりお間抜けな仕業でもって、とにかくは滑り込み、北京の小宇宙(コスモじゃないですよ)をモノレールに乗って旅してきたような感じがします。もっと観念的な"世界"なのかと思っていたら、思いのほか色恋方向の"世界"だったので、大衆色は意外に強かったような(最近のオフィス北野の傾向かしらん)。
アップを極力避けたアングルや、自然光オンリーと思われる照明、途中に挿入されるグラフィック調のアニメーション(クオリティ高し)、クラシック調からエレクトロニカ調まで多岐にわたるBGM、などなど技術的に得ることの出来た要素も数多かったのですが、それ以上に作品に対する作り手の姿勢がストイック(orアヴァン)とセンチメンタルのどちらでもなく、その両方を均等に含んだ地点でバランスを保っていたことがひとつの収穫でした。見る側は時に突き放されたり、時に感情移入してみたり、けれどもその"揺れ"が不快に感じることが無く、その空間に含まれていることが心地よいとすら思えてくるのは『ラストエンペラー』の感覚と似ているなあと思いました。
合間合間にテーマパークのパビリオン名宜しくテロップが画面中央に表示されるのですが、その中に「東京物語」というのがあって、そういえば雑誌かなにかのインタビューでジャジャンクー監督が小津監督との関連を聞かれていたのを思い出しました。何を話していたかは忘れましたが、一昨日命日だったのでDVDを借りてきている身としては見ていて訳も無くどきりとしました。