『埋もれ木』@シネマライズ

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小栗さんの作品はスタッフががっちりしてるから、一つ一つのカットに於ける「絵づくり」にかけてはちょっとした技師連の魂みたいなものを感じてしまうのだけれど、だからといってそれが必ずしも常に作品の完成度に結びついているわけではないので油断してはならない(田村正毅やラウルクタール、クリストファードイルの撮った作品が常にそうでないのと同じ)。この作品も総じて演出の効果が薄く、演じるということに対して自覚的な俳優のみが評価を得ることが出来ているのは皮肉な結果だろう。子役を中心に若い世代のキャストがなぜこうも輝いていないのか、7000人の中から選ばれたヒロイン3人は確かに可能性を秘めているのかもしれないけれど、監督自身がその可能性に距離を置いたまま作品づくりをしていないだろうか、そんな印象でした。
メインキャスト3人の衣装やヘアメイクの、絶望的なまでのあか抜けない感じ(エキストラの方がおしゃれってどういうことだよ)は、狙っているのだとしたら相当なことだと思うのですが、ただ、そういう時代錯誤の異国感、あるいは棒立ちに近い(見ていて苛立ちすら覚えもする)立ち居振る舞いを抜きにしても、田舎の街の風景や、建物や、そこで起こっていく出来事の連なりは非常に曖昧模糊としていて、それらは何かを伝えようとしているわけではないのだけれど、もちろんこういう映画があってもいいよなと思わされる。それはどうしてそう思うかといえば、ひとえにスタッフワークの下支えがあってこそなんですよね。乗っかる脚本は正直どういう類のものでも関係なくて、だからこそ「黒沢組」なんてのが昔はあったんですよね。「冗漫なファンタジー」でやり過ごすべきではないし、少なくとも退屈はしませんでした(TVBROSの映画評なんてホント当てにならん)。
始まるまですっかり忘れてましたが冒頭に某有名漫画家のイラストが使われていてそれも結構お得な感じがしました。以上