『誰も知らない』@シネ・アミューズ

tatanka2004-09-29


いろいろなことを考えさせられ、身をつまされる作品。一口に「泣ける」だとか「愛がヤバい」だとかいってる昨今の感動ものだとかヴァン・ヘルシングなんかと較べると、いろいろなものを見るものに突きつけてくる。子供の生きざま、在り方、そして子供と共に在るべき大人の姿とは。自分が長男であることも手伝って、親と子のどちらの立場にも加担できる視点を持っているので、この際冷静に評価をしてしまうと、子=長男の描き方・演技は素晴らしかったが、それに対して母親の演技には多少の疑問が残る。とっちらかったものを求めていたのは分かるが、少し中途半端な演出になっていたような気がする。冒頭の、お隣さんへの挨拶をするシーン、親子共々してぎこちなさを醸し出しているのだが、それが演出によるものなのかそれ以前の問題なのか、一瞬区別がつかなかった。決定的なのは長男(柳楽)が他の男性俳優、キムさんやエンケンと絡むシーンでは動きも喋りもごく自然で、それまでよりリラックスしているように見える。ここまでもが演出だとしたらもはや匙を投げるしかない。
是枝映画の手法はここにきて一つの完成形を遂げたといってもいいが、根底にあるテーマは前作『ディスタンス』と同じ親子関係の深い絆、あるいは家族である。落とし前のつけかた(地下に肉親を埋める/葬ることで主役が新しい関係性を現在に築いていくところ)が前作を思い起こさせてしまって、少しだけがっかりしてしまった。にしても、脇役(加瀬亮とか、主題歌の人とか、寺島進とか)いい味出てますし、なかなか骨のある一本でした。リピートしたいですね。