『ブエノスアイレス』(dir.ウォン・カーウァイ)

自分はわりと「映画、あ、はい、結構見ますよー(男性女性関わらず軽く嬉々とした感じで)。岩井監督とかウォン・カーウァイとかすごい好きなんですー」的路線(仮にそういうのがあるとして、要するにわりとよくいる薄い映画かぶれのような民)を呪いの目で放逐してきた身だけに、そろそろそそのあたりの"ジャンル"にも評価の目を向けてみようじゃないかなという。いや、メタファーです。メタファー。ファー。
とにかくこの話は簡単に言うと男二人の愛情がメインテーマな訳で、んーもういいや、なんかそういうのすごい苦手でホントは反吐が出るんだけど…めんどくせえと思って見始める。はじめはやはりその関係性がどうしても目に障るが、そのうちに自分の中で(かつスクリーンの中で)二人の距離が咀嚼されていき、思っていたほど皮相的なモチーフではなかったことを窺わせる。脚本に映像の力が加わってより強固になった一例。しかしやっぱりあの照明はずるいのひとことだろう。そこには、全て現実の向こう側で起きているような錯覚を引き起こさせようとする「演出」があった。
しかしこの映画はどちらかといえば情景を描いている系統に入る作品であって、(当たり前だけれど)強い説得力を感じることはできない。そういう意味では岩井もそうだが「雰囲気」の作品が好まれていたのだなー。90年代は。と勝手に総括。