ひよってる場合でもあるまい

ひとり日和
ひとり日和
第136回芥川賞受賞作品。ハードカバーをリンクしましたが、文藝春秋に全文掲載されてたので、そちらを購入して、夕べ深夜に読了。普段はそういう流行りものにあまり触手を伸ばさず、読み慣れた小説や未開拓の過去の文章を中心に読むことが多いのですが、今回は本文以外にちょっと気になることもあったりして、雑誌レベル(漫画でいうところの、単行本ではなくて週刊/月刊誌に掲載されているのを読むレベル)なら、読んでみようかなと。
「ひとり」でいる、「ひとり」であるという感覚を、主人公の生活/心境の描写を通して浮き彫りにする一方で、周りの登場人物もそれぞれが「ひとり」の感覚を持っていて、それを上手に処理していたり、あるいは処理できていなかったりしながら、主人公と関わっていく。「ひとり」は、ひとそれぞれ、異なるすがたかたち、色をしている。そんな世界で、主人公は様々な他人と出会って別れて、たぶん年老いていく。その一過程をすっと切り取った感じのお話でした。
女性の作家さんらしく、登場人物の動作や風景のしつこいまでの精緻な描写が、妙にリアルな情景を浮かび上がらせるのに一役買っていたような気がします。とかく考えすぎで卑屈になりがちな主人公のキャラクターとか、痛々しいのですが、というか、これを痛々しいと見れない人がうらやましいとふと思ったり。