何をもってして「不都合」とするやこれ如何に

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屋代さんと歓談しすぎて日劇plexには予告編途中に駆け込み入場でした。「温暖化(global warming)」の問題についてはすべての人間が今や無視することができない状況で、少しでも考え、そして行動に移していかなければならない、有権者レベルで意識を変えて、それから政府へ働きかけよう、というのが伝えたいメッセージであることはわかるのですが、いくら「これは政治的な問題ではない。モラルの問題なのだ」と言ったところで、言ってるゴア本人がそもそも政治家の立場で言ってる時点でそれは「政治的な問題」になってる訳ですし、彼のバックボーン(実家で煙草畑を栽培してて云々とか、息子が交通事故に遭って云々とか)が途中変なタイミングで挿入されるのがどうも気にかかってしまい、結局肝心の「われわれは何をすべきなのか」というところに関しては、エンドロールの「テキスト」という素材に頼ってしまうという、ドキュメンタリーとしては一番良くないパターンに陥ってしまっていたような気がします。
それでも、この映画を(少なくとも私が)見ようと思ったきっかけはやはりアル・ゴアというキャラクターのもつタレント性、というと語弊がありますが、彼がなぜこのような活動をしているのかというところに興味があったのかも事実です。実際そのモチベーションについては作品中で語られていますし、何より目を引いたのは彼の講演のテクニック、巧みな話術、明晰な言葉遣い、印象に残るフレーズ、それらには、さすがに大統領選を戦っただけのことはあるなあと感心させられました。

「限界を越えて不可能を乗り越えた実例を我々は過去に何度も知っている」(ゴア)
「人間は時に否定からあらゆる可能性を飛び越えて絶望に陥りやすい」(不明)
「"What gets us into trouble is not what we don't know.
It's what we know for sure that just ain't so."

やっかいなのは、何も知らないことではない。
実際は知らないのに、知っていると思い込んでいることだ。」(マーク・トウェイン

まずは現状を正しく認識し、把握し、理解することから始めなければなりません。ゴアの講演で使われていたデータやグラフ(右肩上がりのものばかりで気が滅入りました)、それらを全て鵜呑みにしていたらはっきり言って「洗脳」されますし、それが正しいことだとは思いません。しかし今のアメリカ政府のやり方(簡単に言うと、議定書を批准しないやり方)と並列したときには、もちろんゴアの言い分が幾分かの説得力を持つことは確かです。ただ、政治的なカードに見られることを嫌ったのか、あまり政府の手法に関する言及は作品中あまり見られませんでした。それでもタイトルは「不都合な真実」。権力を失った人間の、形ばかりの抵抗ということなのでしょうか。あまりに歯切れが悪すぎるような気がします。