暮れマスターサイクル


マシューバーニーの「クレマスター」を5作続けて上映するという型破りな企画に行って参りました。全席指定だったのですが、予約を入れるのが遅かったのでなんと最前列での鑑賞。12:00開演、途中休憩をはさみつつ5本目の終演が20:30という半端じゃない長丁場で、もう首は疲れるわ目は痛くなるわお腹は鳴るわ隣の美大生女子2人組は知能指数の低い会話を大声で交わすわ(「フォトショップのさー、パスってなんなの?」「パス?いや使わないけど何それ」「いやパスがさーなんか分かんないんだよねー」「えーだって使わなくても別に大丈夫じゃん」)、そもそもパスを使わずに済んでいるのならそれでいいだろうという話なのですが、それはともかくとして、まあそういう諸々の折り入った事情がデフォルトで設定してあった難解なステージでしたが、なんとか5面クリアしてきました。
詳しい説明、批評は他所に譲ることとして、この人の描こうとする世界観、価値観は既にある程度彼自身の頭の中で確立されているのは伺いしれるのですが、いかんせんそれが作品のクオリティとして結実できていないなあというのが正直な印象です。むしろ、「見せ方」をほとんど意識せず、彼は彼のやりたいように、その場その場で撮りたい画を、さながら鈴木清順のように撮っては繋ぎ、あとはそれが「映画」をどの程度意識するかそうでないかによって出来映えに差異が生じてくるということなのでしょう。つまり、結果にほとんど意味はなく、むしろ作ることこそ彼らにとって意義があることなのかもしれません。
1から5までの5本のうち、「3」はストーリーも明快で、かつコンテンツも豊富に作り込んである作品で、シリーズを代表する作品といえます。また、破壊や抑制の反動から作品が生まれるというコンセプトは「DR」シリーズにもつながるものを感じました。エレベータ前での"演奏"やラウンジバーのシーン、美術館でのシーンなど、印象的なシーンが数多く、完成度の高さが目を引きます。「3」のみは今週末まで上映しているので、もし時間があればまた行くかもしれません。
http://www.cineamuse.co.jp/cinema/index.php?cinema_id=363