『ベジャール・バレエ・リュミエール』@恵比寿ガーデンシネマ

創作バレエというものがクラシックバレエとどう異なるものなのかはこの映画を見終わっても未だ釈然としないのだが(そもそも二者に分けることの意義すら薄いのかもしれない)、舞台=芝居が作り上げられていく課程における一人の劇作家・演出家のコンダクターぶりを追ったドキュメンタリーという位置づけでこの作品は問題ないのだろう。"ベジャールが一つの作品を完成させるまで"とか"彼の半生を綴った"とか、明確なスパンは提示されず、刻まれる時間軸も前後していてあいまいである。つまり映画として見ようとするとそこにはカタルシスも方法論もないし、極端なことをいうと見るべきものはないのかもしれない。しかしながら、作品中に見ることのできるベジャールの視線、仕草、表情など、コンダクターの一挙手一投足は常に瑞々しくまた刺激的な被写体そのもであり、それらがカメラ越しに丹念に切り取られ堆積していく課程こそがこの映画の本質なのかもしれない。彼の作品のコンセプトはとにかくとして、一人の人間の(ある種風変わりな)演出に真剣に耳を傾け、自己を鍛練して心身を統一するダンサーたちの集団がそこに存在しているということが半ば驚異的な状況にすら見えた。その中心にいる男は常にバレエを愛し、常に研ぎ澄まされ、また同時に解き放たれている。小男で稍小太り、頭が禿げ上がってもなお冷め止まないその情熱は冒頭の「ボレロ」のシーンで象徴されていたのかもしれない。